1、茶況
今日、2015年6月12日午前10時より城陽寺田の京都茶市場で第48回宇治市茶品評会の入札販売会がありました。
宇治市産の手摘み碾茶30点と手摘み玉露5点の出品があり、最高落札価格は51,111円でした。
どの生産者も自分の一番手、二番手の品質の茶は「全品」「関品」に出品されるため、宇治品には三番手以下の茶しか出されないので、飛び抜けた品質の茶はありませんでしたが、全体としては例年以上に品質が揃っていたと思いました。
宇治市産茶の最大の特徴は他の地域ではつくりえない香気(におい)です。
味や色では宇治市産を越す茶はあるけれども、香気は宇治市産が世界一だと思います。
2、ドンツキ
第48回宇治市茶品評会に出品された茶のほとんどは二重の寒冷紗被覆茶園で栽培された碾茶でした。中には数点「本簀(ホンズ)」被覆がありました。
今から42年前、私が茶業に入った昭和48年(1973年)当時、寒冷紗による被覆はまだごく一部で、ほとんどの茶園が「本簀」でした。
しかも、コンクリート柱や鉄パイプを使った「永久棚(エイキューダナ)」は無く、4月になると一斉に「下骨(シタボネ)」作りが始まります。
全ての園畑には「覆い小屋(オイゴヤ)」があり、ナル、竹、簀、稲藁、縄など「本簀」作りに必要な資材が入れてあります。
その中に「ドンツキ」と呼ばれる道具がありました。茶園にナル(檜の杭)を立てるとき、地面に穴を開ける道具で、檜の杭の先に鉄の太い槍のようなものをつけたものです。
宇治茶の茶用語を調べて行くなかで面白いことが解りました。
私の家では「ドンツキ」と言っていたこの道具は、近所の林屋さんでは「ツキボウ」、松北園さんでは「ドン」と呼ばれ、同じ木幡なのに呼び方が違います。
中宇治や小倉では「カナツキ」や「アナツキボウ」など色々な名前で呼ばれている事でした。
どれが正式名称なのかを宇治歴史資料館に聞きに行ったところ、「すべてが正解なので、全ての言葉を茶用語に載せてください。」と言われました。
今この「ドンツキ」を現役で使っている家は、小倉の2軒と宇治田原の1軒だけです。
この3軒が「下骨」作りをやらなくなれば、「ドンツキ」は不要のものとなり世の中から消え去り、言葉も皆さんの記憶から消え去ることになるでしょう。
茶業が機械化、大型化、近代化されるにつれて、手製時代の道具、作業、言葉は忘れ去られようとしています。
私はこんな宇治の茶用語を写真とともに残したいと思っています。
皆様のご協力をお願い申し上げます。
執筆:2015年7月