1、茶況
8月3日(月)、京都茶市場で平成27年度産茶の止市(トメイチ)がありました。
取扱量は前年比15%減の約1,500トンにも関わらず、総取扱金額は約42億円で、昨年度の10%アップでした。
静岡、鹿児島はじめ全国の茶産地が平均単価、総売上金額とも下落する中で、全国で唯一、京都だけが平均単価、総売上金額とも上昇しています。
この原因は「抹茶ブーム」による碾茶荒茶の高値の影響です。
碾茶の取扱金額は総売上の60%を超えてしまいました。
ちなみに煎茶は19%、玉露かぶせで19%です。
2、ツミツケとサンボウサン
宇治茶用語のうち、自分が使っていて、その言葉の内容も理解している用語は解説を書けるのですが、人から聞いて知っている用語や、本で見つけた用語は解説が出来ません。
上記の「ツミツケ」「サンボウサン」もそんな用語で、「ツミツケ」は人の話の中で出てきて知っているけど中身を知らない言葉で、「サンボウサン」は堀井信夫さんの「宇治茶を語り継ぐ」の中に出て来る言葉です。
いろんな資料をあたったのですが解答は見つからず、8月4日、仕事が終わってから、元茶研所長の平野正史さんを訪ねました。
以下は平野さんのお教えです。
お茶摘みで「サンボウサンが多い」とは、「お茶の摘み方が荒い」と言うことです。では、その語源は何でしょうか?「サンボウ」とは仏教用語で「仏」「法」「僧」(ブッポウソウ)のことで「三宝」と書きます。
宇治ではお仏壇の花として茶の木を供えることも多かったようです。
その時、「仏」「法」「僧」の「三宝」にならって、茶園のてっぺんの新枝とその下の2本の新枝を供えました。
本来の茶摘みなら、新芽のついた枝を親指と人差し指の第1関節で挟んで折摘みします。
けっして爪をたてて摘みません。
その時、古い枝から出た新芽のついた新しい枝を全て摘むのではなく、古い枝についた新しい枝の根本の1~2cmを残して折摘みします。
この残した1~2cmの新枝を「摘み付け」(ツミツケ)と言います。
お茶摘みは茶株の下から、ふところから摘みはじめ、次に鬢面(ビンヅラ)を摘んで、最後に頭を摘みます。
その最後の頂芽を、三枝とも一緒に古い枝についたまま、古い枝を折って摘むことを、「サンボウサン」と言います。
摘み娘さんにとっては、三本を一度に摘めて、楽で目方も増えるので良いのですが、生産家にとっては良いことではありません。
同じ覆い下のお茶である玉露では、「しごき摘み」されることも多いのですが、碾茶は「しごき摘み」はされません。
その理由は、蒸された新芽がくっついて重なり葉となり、均一に乾燥出来ないために品質が落ちるのです。
新芽に枝と葉柄が付いていると、くっついた葉が散茶の時に離れて、重なりが少なくなるのです。
以上、分からんことを丁寧に教えてくださる大先輩。
ありがとうございました。
執筆:2015年9月