お抹茶のすべて 7-2 【「抹茶問屋の仕事」その1】

(イ)入札会場
碾茶の入札が揉み茶の入札と違うのは、煎茶や玉露は荒茶を仕上げればすぐに製品になるが、碾茶は仕上げただけでは製品にならず、茶臼で挽いて抹茶にして初めて製品になるということです。ですから、碾茶の荒茶を見て、挽いたらどうなるかを考えて買うことが必要です。

(ウ)入札
煎茶や玉露の入札では、拝見盆と審査茶碗が一セットです。拝見盆には見本茶が100g入っています。京都茶市場の拝見盆は角盆ではなく、丸盆が使われています。拝見盆には四角い名札が貼られています。札には製造月日、茶種名、茶期、摘採方法、生産者名、製造工場名、住所、品種名、数量、が書かれています。審査茶碗には、見本茶3gを熱湯で4分間進出した浸出液が入っています。碾茶の入札では、拝見盆と審査茶碗のほかにもう一つ茶殻が置かれ3つで一セットです。入札する人は、札と茶と浸出液と茶殻を審査して入札価格を決めます。

(エ)名札
入札に何年も通っていると、生産者の名前と品種と製造日を聞いただけで、茶の現物を見ないでも、その茶がどんな茶で値段はいくら位か分かるようになります。また、分らなければ良い入札はできません。
各産地によって摘採適期は異なりますが、出てくる順番は毎年決まっています。各生産者も色々な畑のいろいろな品種の碾茶を出しますが、その順番は毎年決まっています。出てくる順番は、さえみどり、あさひ、さやまかおり、てんみょう、やぶ北、ごこう、宇治光、さみどり、かなやみどり、おくみどり、などです。
何年も色々な茶を入札で落として使っていると、自分の店に合う茶合わない茶、使って良かった茶悪かった茶が分かってきます。買って良くなかった茶は次の年の入札では入れませんし、だんだん自分の好みの茶を作ってくれる生産地と生産者が決まってきます。しかし、茶は農産物なので同じ生産者の同じ場所の茶でも、毎年同じ品質の茶が生産される事はありません。
何年も入札に通っていると、生産地の特徴が分かります。碾茶も煎茶と同じで、三拍子、四拍子そろった茶はありません。碾茶の三拍子とは、香り、味、色です。四拍子とは、香り、味、色と値段です。三拍子のうち、味は生産家の力で作ることができます。色は生産家と土地の力の合作です。香りは生産家の力では作れない、土地が作ってくれるものです。色は眼で見て判断できるものなので、誰が見ても同じように見ることが出来ます。
同じ色合いでも、冴えがあるとか明るいとか品があるとか、微妙な判定はプロにしか出来ませんが、或程度は誰でも同じような判断が下せます。碾茶の場合、葉そのものの色より、茶殻の色の方が重要視されます。それは葉の色よりも茶殻の色の方が、抹茶の挽色に直結するからです。特に二番茶では挽色重視なので、葉の色よりも茶殻の色を重点的に審査します。

(オ)外観
碾茶の場合、外観のうち形状はあまり問題になりません。葉っぱのまま乾燥されているので、形状自体がないのと一緒です。
形状が問題にならない代わりに、重要なのは手触りと色です。手に優しくあたるのか、手に刺さるのか、フワーとして柔らかいのか、ゴリゴリと硬いのか、軽いのか、重いのかで、その碾茶の栽培、製造が分かり、買って良いのか悪いのかが分かります。
拝見盆の見本の碾茶に手のひらを乗せてそっと押さえるか、手で握るとわかります。色は明るい冴えた緑色がよく、赤く見えるもの、黄色く見えるもの、白く見えるもの、黒いもの、くすんで見えるものはダメです。

 

前のページに戻る / 次のページに続く

*次のページより画像が多くなります。携帯でご覧になられる方はご注意ください。