次に宇治の問屋独特かもしれませんが、古茶の使い方です。
宇治の問屋は皆「古(ひね)」を持っています。「古(ひね)」を持たない、若しくは「古(ひね)」を持てない宇治の問屋は三流です。
15年ほど前、静岡の問屋さんが玉露の事を勉強したいと我社に来られました。私が「弊社の玉露は古と新を合組して作ります」と云うと、「古茶を使っていることを正直に云うお茶屋は初めてです。」と非常に驚かれていました。
静岡では古茶を持っていることは「お茶屋の恥」で、「新茶最高」の様です。茶は農産物なので必ず表作と裏作があります。
「表裏表裏」や「表表裏表」や「表裏裏表」と表も裏も何故か三年連続にはなりません。また、昨今は裏作の年でも、「宇治光」が当たったとか、「ごこう」が当たったとか、品種によっても「当たり外れ」が見られるようになりました。
問屋の使命の一つは、どんな作柄の年でも、同じ銘柄の茶の品質を毎年一定に保つことにあります。(これは小売り屋の使命でもあります。)
そのためには、表作の年の「性良物(しょうよしもの)=品質の良いもの」を古にして、裏作の年のリスクヘッジ(危険回避)をします。
品質の落ちるものは古にしてはいけません。それは只の「残り物」です。
わが社の抹茶(加工用は除く)を例にとると、新茶時期から秋までは、新1対古1で、秋から冬までは新2対古1で、冬から春までは新3対古1で春から新茶までは新4対古1と合組します。
このように古を合組することにより、季節による品質変化と年による品質変化を極力少なくすることが可能です。