9、吉浜大作の煎茶合組理論 その1

「茶とともに」吉浜大作(昭和36年、1961年)
「茶の販売に当たっては、販売者が茶の生産地およびその特質を知らずして、これを販売規格品に充当する事は不可能である。ゆえに私は茶業青年層に茶を知ってもらいたいと、昭和37年に生産地別の茶を出品し、これを用いて各自が規格上小売品の配合を実行研究した。小売り規格品の構成に対し、その原料を集荷せねばならない。その原料は絶対に純生産地別の茶でなくてはならない。集荷する品質は、淡白性、濃度性、甘味性、香気性の四種を集める。その使用数量は、淡白性50%、濃度性25%、甘味性15%、香気性10%である。またその四種は東京都の水に適する生産地でなくてはならない。淡白茶は静岡県小笠郡南部、川根筋、本山茶で、濃度茶は静岡県では周智郡北部、品種品では富士、浜松三方原の藪北、宇治方面では宇治田原禅定寺、大和方面では郡山、大和田原。なお、最近九州地方が増産されている。濃度もあるが場所によって東京の水質に適しない場合があるが、鹿児島の枕崎方面の茶は適する。なお、指宿の茶は適品と思う。次に甘味茶を求めるに苦心する。適品としては埼玉県入間郡金子村、すなわち根通りの茶、三重県菰野山麓の茶が狭山茶に類比している点がある。香気茶は宇治田原湯谷付近より奥山田、湯船、朝宮が適すると思う。香気の茶の配合率を10%とした理由は、香気あれど味が薄いからである。しかし配合比率はその土地即ち「販売地域の消費者の層と周辺の環境と使用する水を充分に研究してその配合率を変更せねばならない事を念頭に置いてもらいたい。」
今迄多くの本や論文を読みましたが、「茶の合組」について書かれた文章は殆どありません。それは合組がその茶店の最高秘密で、門外不出とされてきたからだと思われます。また、多くの書物や論文を書いておられる茶業試験場、茶業研究所の研究者たちの研究分野には「茶の合組理論」が含まれていない事も一因です。
吉浜大作は昭和22年、1947年に創立された東京都茶商工業協同組合の初代理事長です。彼が昭和50年、1975年に発刊した「茶とともに」には東京の茶専門店としての彼の煎茶合組理論が記されています。その理論は煎茶は淡泊茶、濃度茶、甘味茶、香気茶の四種を基本的には50%、25%、15%、10%合組すると云う理論で、彼はその四種に適すると考えている産地も書いています。

「煎茶の規格品季節別合組表、昭和36年、東京」
第1期(5,6,7月)は一番茶を多く使用する関係上利益を多く見積もる。合上り60%
第2期(8,9,10月)は味を強化する関係上二番茶を使用するとともに山城狭山を要す。合上り75%
第3期(11,12,1月)は一年間を通じ香味を最高に発揮する時。山城狭山に重点を置く。合上り70%
第3期(2,3,4月)は春期に入り香味爽やかにし、新茶に移行するために考慮する。合上り75%

 

次に、煎茶の季節別合組表を書いています。合上りが平均70%なので、現在の平均小売原価の2倍以上の茶を使用していることが分かります。お茶が売れるはずです。
季節が秋、冬と進むほど山城、狭山の比率を増やしています。品種茶が増加した事、冷蔵庫が普及した事、チッソ封入が普及した事、全国の製茶機械が寡占化し大型化した事、等により、四季別にお茶の合組を変化させるお茶屋は非常に少なくなっていると感じます。


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